塩づくりのプロセス


 
  塩浜作業は「潮汲み3年、潮撒き10年」といわれ、熟練した技術を要します。
  塩づくりは、春先の塩田整備に始まり、日照量の多い夏を最盛期として、天候を予想しながら行われます。


 


揚げ浜式製塩法
海面より高い場所に、粘土を用いて人工の基盤を築き、細かい砂を敷き詰めます。この「塗浜(ぬりはま)」と呼ばれる塩田で、塩づくりが行われます。
【使われる道具】 --塩田用具その1--
バイ、磐突(ばんつき)・・・塩田の地盤を突き固める道具。
じょうご・・・板で作った背負子。砂取舟から塩田に砂を運ぶのに使う。
浜とりいぶり・・・大型のいぶり。塩田一面に砂を広げるのに使う。
こまざらえ、おこしごま・・・塩田を縦横に掻いて砂を掻き起こしたり、固くなった浜地を平均して軟らかくする。
海に降りて海水を汲み上げて運び、おちょけを使って塩田に撒きます。「潮撒き10年」といわれ、海水を均一に撒くには熟練した技が重要です。塩田に撒かれた海水が日照と風で蒸発するにつれ、塩田の砂に塩分が付きます。
【使われる道具】 --塩田用具その2--
しこけ、引桶(しごおけ)・・・頑丈な大桶。汲み上げた海水を溜める。
かえ桶、荒潮桶(あらしおおけ)、担桶
(かよいおけ)・・・肩荷棒でかつぎ、海水を汲んでしこけに張る。2斗入りが標準。
肩荷棒(かたにぼう)、担棒(にないぼう)・・・かえ桶を肩に担うために用いる。
おちょけ・・・しこけに溜めた海水を塩田に撒布する。打桶(うちおけ)とも。
3-塩浜作業
塩分が付着した砂を集めて、塩分濃度の濃い鹹水(かんすい)を採る工程です。塩の結晶が付いた砂を集めてたれ舟に入れ、海水をかけ、結晶を溶かしながら砂と分離させます。
【使われる道具】 --塩田用具その3--
筋さらえいぶり・・・小幅のいぶり。たれ舟の近くに砂を曳き集めるのに使う。
しっぱつ・・・いぶりで掻き集めた砂をたれ舟に詰めるとき、砂をすくうスコップ。
たれ舟・・・2メートル近い箱型の枠を組んだ、ろ過装置。塩分を充分に吸収した砂を詰め、海水を注ぐ。揚げ浜製塩の重要な道具。
どう桶、どうけ・・・大きな桶。たれ舟でろ過された塩汁を溜める。
はな桶、端間桶(はないおけ)・・・どう桶に溜めた塩汁を釜屋へ運ぶ小型桶。
4-釜屋作業
鹹水(かんすい)を大釜で煮詰める工程です。8時間ほど煮詰め、不純物を取り除き、再び大釜で16時間ほど煮詰め、最後に苦汁(アク)と分離させると塩の結晶ができます。
釜屋作業は、熱気が立ち込める釜屋の中で、火加減を調整したりアクを取り除きながら、夜を徹して行われます。
【使われる道具】 --釜屋用具--
・・・江戸中期までは能登の中居(穴水)の鋳物師の釜が使われた。
釜火箸・・・常に適当な火度を得られるよう、薪や柴を調整する。
み汲み杓、釜杓・・・釜で一度煮て濃縮した塩汁(みつ)を汲む。
かっすり・・・み汲み杓では釜の底に少量残るので汲みとるのに使う。
濾し桶・・・みつを流し込み、ろ過して下部の注ぎ口から釜へ注ぐ。
さっくり・・・こし桶でろ過したみつを釜で焚くと、やがて表面に薄氷のような固まりができるので、釜の底をかき回す。
あわかき、ゴミ掻き・・・さっくりで釜底をかくと、泡がたくさん浮いてくるので、あわかきでかき寄せ取り去る。ゴミはゴミ掻きで取り去る。
塩かき、しおあげ・・・釜の中にできあがった塩をかき集めるのに使う。
メートル・・・塩水濃度の測定器械。明治以後に使われるようになるまで、江戸時代は経験とカンで濃度を測った。



流下式製塩法



「流下式塩田法」は、一般に「流下盤(りゅうかばん・粘土製のゆるい傾斜の地盤)」と「枝条架(しじょうか・竹ぼうき状の竹の小枝をいくつも並べた装置)」の組み合わせにより海水を濃縮し、鹹水(かんすい)を採る方法です。能登では竹のすだれも使います。
海水をしずくのように落とすことで濃縮を進め、約10%〜11%の濃度にあがるまで、1週間〜10日前後かけて循環を繰り返します。
こうして濃縮された海水は、揚げ浜式塩田での製塩方法と同じように煮詰めて、塩を作ります。
【使われる道具】 
ポンプ・・・海水を汲み上げます。
枝条架、竹すだれ・・・海水をしずくのようにまき、水分の蒸発をうながします。

循環槽・・・何度も繰り返して、海水の濃度をあげていきます。